繁殖生態と初期生態: 海産魚類は103〜107粒の卵を産み、陸上動物と比べると極めて多産です。成魚の大きさとは無関係に、産み出される卵の大きさは平均1.0 mmで、卵から孵化する仔魚も数mmしかありません。仔魚の形態と生態は成魚とは大きく異なり、多くは数週間の浮遊生活期を過ごします。例えばニシン・イ ワシ類は「シラス」と呼ばれる仔魚期を持ち、1〜2か月間の浮遊生活の後に、イワシ類らしい形態や体色を持つ稚魚へと変態して群泳するようになるのです。 卵として産出されてから稚魚になるまでの数か月間に、生まれた夥しい数のシラスのほとんどが死滅してしまい、わずかの割合で生き残った稚魚が新規加入群と して次の世代を形成します。親魚が産む卵の量と質、仔稚魚が生き残る割合(生残率)は大きく年変動します。その結果、新規加入群の資源量が大きく変動し、 人間が利用できる資源量も増減するのです。

資源量変動のしくみ: 海の生物資源はどのようなしくみで増減するのか、これは海洋生物資源学が解明すべき重要な課題です。親が産み出す卵の量や質に関する繁殖生態と、産み出された卵・仔魚の生き残りに関する初期生態が、資源量変動のしくみを解明する基礎となります。資源生態分野は、魚類の繁殖生態と初期生態を研究することによって、新規加入群の資源量が変動するしくみの解明を目指しています。これまでに研究対象とした魚種は、マイワシ、カタクチイワシ、ウルメイワシ、キビナゴ、コノシロ、ワカサギ、シラウオ、ハダカイワシ類、アオメエソ、サンマ、チョウチンアンコウ、マアジ、シマアジ、サワラ、カツオ、などです。

レジームシフトと生態変化: 海洋生物資源の変動のしくみとして、海洋生態系のレジームシフトという現象が広く認識される ようになりました。これは全球的な気候の変動に伴って大洋規模で海洋生態系の基本構造がある状態から別の状態へと移り、それに伴って生物資源も大きく変動 するという認識です。1980年代末に起こったレジームシフトに伴って、日本のマイワシ資源が激減したことは記憶に新しいところです。資源量変動のしくみ 解明の課題は、「レジームシフトに伴う海洋環境の変動に応答して資源量が増減するという現象は、繁殖生態や初期生態のどのような変化に基礎づけられているのか」という点に絞られてきました。

変動する資源と安定な資源: レジームシフトに伴って大変動する資源がある一方で、シフトとは関係なく安定な資源もありま す。20世紀後半に日本周辺でマイワシ資源が数百倍の幅で増減したのに対して、マイワシと産卵場を分け合うウルメイワシは数倍の変動幅で安定していました。大変動する資源と安定な資源の比較生態学は、資源量変動のしくみを解明する手がかりとなりそうです。

渡邊 良朗
海洋生物資源部門
資源生態分野 教授

岩田 容子
海洋生物資源部門
資源生態分野 講師

猿渡 敏郎
海洋生物資源部門
資源生態分野 助教











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